理由は胃の中にある。ナマケモノは葉っぱを食べてから消化し終えるまでに1か月以上かかる。人間なら、昨日の昼食が来月やっと消化される計算だ。なんとも気の長い話である。しかも満腹のナマケモノでは、体重の約3分の2が胃の内容物で占められることがある。体の大半が「処理中の食べ物」なのだ。だから週1回の排泄で、たまりにたまった分が一度に出ていく。

この遅すぎる消化が、思わぬ同居人を呼び寄せた。ウィスコンシン大学マディソン校の生物学者、ジョナサン・N・パウリ氏は、ナマケモノの体毛にひそむ蛾を調べた。蛾の収集方法は、よりにもよって昆虫バキュームである。吸い取った蛾を数え、体毛の成分を分析した結果、蛾・藻・ナマケモノの三者が互いに依存する共生関係が見えてきた。蛾はナマケモノの排泄物に卵を産み、成虫になると体毛に戻る。蛾の死骸や排泄物が窒素を供給し、それを栄養に緑藻が体毛の上で育つ。ナマケモノはその藻を食べると考えられている。自分の体が、小さな畑になっているのだ。

似た仕組みは海の中にもある。サンゴはゾオキサンテラという光合成生物を自分の細胞の中に住まわせ、エネルギーの最大90%を供給してもらっている。よくできた話だが、場所の使い方がまるで逆なのが面白い。ナマケモノは体の外側に藻を生やし、サンゴは体の内側に藻を取り込む。やり方は正反対だが、どちらも自分の体を畑にしている。

畑の持ち主が動かないのは、当然だ。