2018年の放射性炭素年代測定で、この塚群のうち最も古いものが少なくとも3820年前に造られたと判明した。エジプトのピラミッドが建ち始めた頃に、すでに工事は進行中だったという計算になる。そんなバカな、と思うだろう。しかも建造主は体長わずか1センチのSyntermes dirusというシロアリだ。人差し指の爪の上にちょこんと乗るサイズの虫が、国ひとつぶんの土地を3800年以上かけて作り変えてきた。なんとも気の遠くなる話である。

塚の下には巨大な地下トンネル網が広がっている。掘り出された土の総量はおよそ10立方キロメートル。まるでピンとこない数字だが、ギザの大ピラミッド約4000基ぶんの体積だと言えば、その途方もなさが少しは伝わるだろうか。あの巨大なピラミッドを4000個並べてもまだ足りないかもしれない土の量を、体長1センチの虫たちがせっせと地下から運び上げたのだ。

では、なぜ指揮官もいないのにこれほど精密な構造が生まれるのか。シロアリの個体はごく単純なルールで動いている。暑ければ壁に穴を開けて風を通す。湿っぽければ乾いた土をこねて壁を塗り直す。たったそれだけだ。しかし、この「その場しのぎ」が何億匹ぶん積み重なると、話が変わる。外の気温が連日35度を超えるような土地でも、塚の内部はほぼ一定に保たれる換気システムが勝手にできあがる。誰かが全体図を描いたわけではない。それでも結果として、ちゃんと機能する建築になっているのだから恐れ入る。

この換気の仕組みに目をつけた人物がいる。ジンバブエ出身の建築家ミック・ピアース氏だ。ピアース氏は1996年、首都ハラレにショッピングセンター「イーストゲートセンター」を完成させた。このビルには、なんと空調設備がない。赤道に近いアフリカの都市で、エアコンなしのビルである。地下からひんやりした空気を吸い上げ、建物の中をゆっくり通し、48本の煙突から熱気を外へ逃がす。使う電力は、同じ規模のビルのわずか10分の1で済む。冷却システムを丸ごと省いたことで350万ドルのコスト削減を実現し、ピアース氏は2003年にオランダのプリンス・クラウス賞を受けている。シロアリが何千年もかけて「たまたま」たどり着いた仕組みを、ピアース氏は見抜いて建築に翻訳してみせたのだ。

3820年間、図面なし、会議なし、予算書なし。それでもお手本にはなるらしい。