テッポウエビは片方のハサミが異様に大きい。このハサミを時速90kmで閉じると、水中に高速の水流が生まれる。水流の圧力が急激に下がった瞬間、水の中に小さな気泡ができる。キャビテーションと呼ばれる現象だ。たかが気泡、と思うかもしれない。ところがこの気泡が潰れる瞬間、温度は5,000Kを超える。太陽の表面温度に迫る熱が、エビのハサミの先で生まれているのだ。

しかも、この気泡が潰れる瞬間にごく微かな光が出る。ソノルミネッセンスという現象で、動物がこれを起こした初めての確認例だ。あまりの意外さに「シュリンポルミネッセンス」という名前までつけられた。エビ発光、である。

この光を確かめたのが、オランダ・トゥウェンテ大学のミシェル・フェルスライス氏らの研究チームだ。フェルスライス氏らはまず2000年、高速カメラと水中マイクでテッポウエビのハサミが閉じる瞬間を撮影し、あの「パチン」という音がハサミ同士の衝突ではなく、気泡が潰れる音だと証明した。翌2001年には、気泡崩壊時の発光をとらえてNature誌に発表している。

面白いのは、このキャビテーションが病院でも使われていることだ。体外衝撃波砕石術という治療法がある。体の外から衝撃波を当てて、腎臓の結石を砕く。衝撃波が当たった場所で気泡が生まれ、潰れるときの力で石が割れる。やっていることの骨格が、テッポウエビのハサミとそっくりなのだ。

エビが獲物を仕留める力で、人間は腎臓の石を割っている。これほどのことをやってのける生き物が、体長5cmで海底に暮らしている。